【開発者インタビューVol.4】

デザインに秘められた無数のこだわり

株式会社リコー プロフェッショナルサービス部 総合デザインセンター
プロダクトデザイナー 浜村 寿宏

コンペで選抜されたリモコン型デザイン

―― RICOH Image Pointerのデザインに関わった経緯を教えてください

開発プロジェクトが始まってしばらく経ってから、私の所属する総合デザインセンターに声が掛かり、デザインコンペを実施することになりました。私はつねづね、使い勝手からくる必然性のあるかたちを心掛けているので、サイズ感や使用感を重視したデザインをしました。自分で確認するために発泡スチロールで簡単なモックアップモデルを作り、開発チームのメンバーにも実際に手にしてほしかったため、そのモデルを手に持ってコンペのプレゼンに挑みました。その結果、10数案あった中から私の案が採用されました。

具体的にどういう点にこだわったのでしょうか?

その前の開発モデルは手に持ってもらうことだけを想定したコロコロしたかたちでした。しかし、さすがに転がってしまうのは困るので、テレビのリモコンみたいにして置けるようにデザインしました。さらに、手持ちでの投影時に手首にムリな力がかからない方がいいと考えて、光学系を少し傾けるために上部を湾曲させました。一般的なプロジェクターにはない大きな投影ボタンはそのまま踏襲して、RICOH Image Pointerのポイントとしました。ここを押せば点けたり消したりできることがひと目でわかります。

サイズが決まるまで続いた試行錯誤

―― 苦労した点はどこですか?試行錯誤のあとが見えますが…

クラウドファンディングのご支援者様に対して披露しないといけなかったため、早めにベースとなるデザインを決めて、そこから少しずつ変更していきました。難しかったのは、サイズですね。たとえば、投影時間をなるべく長くしたいという要望に対して、それに見合ったバッテリーを搭載しようとしたら本体が大きくなり、性能のいい光学ユニットを採用することになったのはいいのですが、またもや大きくなって。最初は放熱を意識せずデザインしていたので、放熱のためのスペースを設けたらまたもや大きくなりました。デザインチームの同僚からは「コンパクトさの驚きはなくなった」「厚みを感じる」「大きくて手に余る」などの意見が寄せられ、開発チームとも何度となく話し合い、いくつもモックアップをつくりました。大きくなったら小さくして、また大きくなったら小さくしての繰り返しで、デザイン確定まで9ヵ月くらい。まったく新しい製品なので時間が掛かってしまいました。

デザイン、機能、コストのバランスを考慮

―― 放熱問題がデザインに影響を及ぼすことはなかったのでしょうか?

ありましたよ。実は、初期のモデルでは、熱を逃がすための穴とスピーカー用の穴があって、前、後ろ、横と穴だらけでした。それではさすがに美しくありませんので、穴をここまで開けずになんとかできないかと設計のスタッフに相談しました。そうしたら、内部構造にアルミのフレームを入れることで放熱できる仕組みを考えてくれて、ようやく機能とデザインがうまく成立したんです。

―― 色や素材はどうやって決めたのでしょうか?

リコーのオフィス製品でよく採用している白に加えて、コンシューマー向けの製品ということでポップな赤なども検討しました。同じ手持ち機器であるカメラのように見せたいという意図で、初期のモデルはカメラ風のザラザラの黒塗装をしましたが、塗装するとコストがかさむため、量産機では素材そのものの色を活かしたプラスチックの黒にしました。

―― その他、工夫した点はどこですか?

ピント合わせのギアを別のものに変えることになった時に、操作しやすいリング幅でありながら出っ張りを小さく収める工夫をしました。それから、試作機を輸送中にレンズが割れてしまったためレンズ前に保護ガラスを付けました。ご支援者様の声から採用になった三脚座は、ただ付けただけでは手に当たって痛くなるので、当たらないよう滑らかに改良しました。

新しい、おもしろい使い方を見つけてほしい

―― プロジェクトを終えた感想を聞かせてください

私は、以前カメラのデザインをしていましたが、最近は産業用機器など大型機械をデザインすることが多く、久しぶりに小さなものに取り組みました。大型機械は試作するにもかなりのコストがかかりますが、RICOH Image Pointerのように小型のものは気軽に試作できます。設計側と話し合い何度もサイズ感を確かめながらつくれたのは良かったです。試行錯誤がつらいときもありましたが、こうやってかたちになり、多くの人から反応をもらえるとやはり嬉しいですね。

―― ユーザーにはどのように使いってもらいたいですか?

クラウドファンディングのご支援者の中には、ロボットアームにRICOH Image Pointerを付けている人がいて、おもしろいことをしているなと感心させられました。落書きの代わりに何かゲリラ的に画像を出すとか、大勢の人が一斉に画像を出して楽しむとか、イベントで利用してもいいですよね。いずれにせよ、RICOH Image Pointerは単なる小型のプロジェクターという位置づけではなく、まったく別のものですから、新しい使い方を見つけて自由に楽しんでもらえたらいいなと思っています。

※ 掲載情報は2022年6月時点のものです。

購入する