【開発者インタビューVol.3】

手のひらから可能性が大きく広がった

株式会社リコー TRIBUS推進室 井内 育生

アイデアをかたちにし、意識を変えるプログラム

―― RICOH Image Pointerを生み出した「TRIBUS」について教えてください

当社には、グループの社員であれば3Dプリンタやレーザーカッターを自由に使っていい「つくる〜む新横」というファブスペースがありました(※現在は新横浜から別の事業所に引き継ぎ)。僕はそのスペースの運営をしていたのですが、人が集まって楽しそうにモノづくりをしている姿をよく目にしていたんですね。そこに経営企画部の人がやってきて「他の社員の意識も変えられるよう、アイデアをかたちにするコンテストをやろう!」という話になりました。そこから「TRIBUS(トライバス)」(前アクセレレータープログラム)がスタートしました。

―― RICOH Image Pointer が採択された2019年が初年度と伺いました

それまでは、社内から「やりたいことをやらせてもらえない」という声が挙がっていたため、やりたいことに挑戦できる場を与えて、グループ全体を活性化させたいという狙いがありました。RICOH Image Pointerが採択されたのは2019年でして、初年度だったというのに社外104社、社内110チームも参加してくれました。その中から最終選考に残った13案のうちのひとつだったというわけです。

―― 審査員の反応はいかがでしたか?

実際に動くプロトタイプを見せられたので説得力があったと思います。「リコーらしい提案だ」「そこまでできているなら、製品にした方がいい」と言われて採択に至りました。僕自身、最初、開発担当者から試作品を見せられたときはやっぱり驚きましたね。透明な樹脂でできていて、無理矢理機能を収めた感じでしたが、それでもちゃんと画像が写って「おおっ!」となりました。かたちは蚊取り線香を入れる蚊やり豚か潜水調査船のようで、完成した製品とはまったく違っていました。

クラウドファンディングで得られたのはファンとの絆

―― 本プロジェクトで印象に残っていることは何ですか?

購入型のクラウドファンディングを実施したことですね。採択されたものの本当に売れるのかという不安をだいぶ払拭できたと思います。どういった人がお客様になり、どれだけの人が購入してくださるのかが発売前にわかりましたし、実際に支援金が3000万円集まったときはとても嬉しかったです。

―― クラウドファンディングを通じてファンコミュニティができたそうですね

ご支援者様と意見交換ができるのも購入型クラウドファンディングのメリットですから、「こういう機能があるといい」と声が寄せられることもありましたし、こちらから「いま、ここを検討しています」などと情報発信することもできました。僕は運営側の人間ですが、それでもWeb上の書き込みを見るとワクワクしましたね。ただ、クラウドファンディング終了後にようやく生産をスタートしたため、お届けまで時間がかかってしまいました。お待たせする間も情報発信を怠らず、交流して、さらにお手元に届いてからは「こういう使い方をしている」と楽しんでいる様子を投稿してもらったりとファンコミュニティが生まれたのは良かったです。ご支援者様ひとりひとりに、RICOH Image Pointerを自分で育てたという気持ちが芽生え、愛着も増していったんじゃないかなと思います。

ビジネスの現場で使う人、増えそうな予感

―― 一般販売後の反応はいかがですか?

当グループの販売会社であるリコージャパンから「ビジネスの現場でニーズがありそうだからBtoBの顧客に向けて販売したい」という声が届いています。開発当初から想定していたとはいえ、やはりカバンからサッと取り出して、資料をそれなりの大きさで投影できるというメリットが、営業職や現場仕事の人のニーズにマッチしているようです。プロジェクターやモニターを持って歩くとなると荷物になりますし、たとえ持って行ったとしても出先の通信環境を確認したり、接続に手間がかかったりとやっかいですしね。

「TRIBUS」から楽しい未来を創造したい

―― その他、「TRIBUS」発のユニークなプロジェクトはありますか?

StareReap(ステアリープ)ですね。こちらは、当社が長年培ってきたインクジェット技術とデジタル技術を駆使して生み出した立体印刷です。たとえば油絵ですと、筆の動きで生まれる凹凸、光りが当たったときの色の出方なども本物に限りなく近い状態で表現できます。すると、高額で手が届かない憧れの作家の作品も複製画として買うことができ、アートがより身近になります。もちろん売れれば作家としては知名度も上がるし、それが作品づくりの原動力になり、ひいてはアート市場の活性化につながると考えます。
現在では、既存作品の複製だけでなく、この技術を使ってアーティストと一緒に作品を創る、ということにも取り組んでおり、2021年6月より、銀座の三愛ドリームセンターで「リコーアートギャラリー (https://artgallery.ricoh.com) 」として運営もおこなっており、多くのアーティストとの共創に取り組んでいます。

―― 今後「TRIBUS」からどんなモノが出てくるしょうか?

正解がないので、どのようなモノが生まれるかはわかりません(笑)。社会もユーザーの暮らしもスピーディに変わっていくでしょうし、そうした中でやっぱり楽しい未来に導けるようなモノ・コトが出てくるといいですよね!

※ 掲載情報は2022年6月時点のものです。

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