【開発者インタビューVol.2】

いくつものトラブルを回避してようやく完成へ!

リコージャパン(株) ICT事業本部 村石 貴也

リコーテクノロジーズ(株) プロダクト事業本部 緑川 瑠樹

話題のプロジェクトへの参加が決定

―― 開発に関わった経緯を教えてください

村石私は、長い間、PM(プロジェクトマネージャー)をやってきて、プロジェクターにおいては約10年の間で20数機種の立ち上げに関わってきました。最初は、チームリーダーの和田 雄二からときどき相談を受けていて「本当に困ったら声を掛けて」と言っていたらば、「そろそろ大変なことになりそうだから頼む」と声が掛かりました。

緑川私は家電メーカーで光学系製品の開発に携わったあと、(株)リコーに転職し、複合機のメカ設計を担当するようになりました。さらに、新しいことにも挑戦したくて2020年1月にリコーテクノロジーズ(株)へ出向した矢先に開催された新規デバイス検討会に参加したところ、和田と出会ったんです。「まず試作して、ブラッシュアップして、また試作してというPDCAを素早く回して新しいモノを生み出していきたい」という考えが一致し、出会ってから1週間ほどで、とあるプロトタイプを一緒に作製しました。その時のスピード感がきっかけで、今回のプロジェクトにお声がけいただきました。

―― 声を掛けられたとき、どう思いましたか?

村石実際問題、PMがいないとモノづくりが進められませんし、OEM生産の経験者がやった方がいいだろうと考え、「自分がやるしかない」と腹をくくりましたね。もちろん、コンシューマー向け製品の開発にも興味がありました。

緑川ちょうど私に話がきたとき、リコー初のクラウドファンディングを実施するということで、社内でRICOH Image Pointerが話題になっていたんです。ワクワクすると同時に、メンバーに加わることによって、ものづくりや事業化の一連の流れが見えて自己成長にもつながるだろうと考えました。「ぜひとも参加させてほしい!」そんな気持ちでしたね。

ひとりで何役もこなして低コストを実現

―― 通常業務と異なっていた点はありましたか?

村石基本的には変わりません。スケジュールやコストの管理をし、メンバーが気持ちよく仕事できるよう環境を整えたり、がんばって開発できるよう皆を引っ張ったり、ムリを言ったりしました(笑)。ただ、コストが限られていたので、通常なら専門の部署がやるマニュアルやメニュー画面の文言は私が考えメンバーで決定しました。

緑川いつもの業務との違いは、設計担当者が私だけという点です。本来であればかたちをつくるメカ、基板をつくるエレキ、電源を使ってモノを動かすソフトとそれぞれで担当が異なり、分業制で動くのですが、今回は一通り自分で考えてやる分、責任は大きかったです。また今回、新たな技術分野でもあることから、設計と併行して知的財産の権利化も同時に進めていきました。

ファンレス・プロジェクターはこの世に存在しなかった

―― やはりファンレスは難しかったのでしょうか?

緑川私は、最初ファンレスに反対でした。一般的なプロジェクターはどれもファンで放熱をしていますし、もしファンレスに挑戦するとしても、ファン付きのパターンとどちらも併行して検討していくべきと考えていました。けれども検討していくなかで、手が触れない場所に熱を逃がす工夫や、制御で光量を調整することで、ファンレスの価値を届けられる目途が立ちました。それによって、「手に持ったときに風が当たらないため、不快感がない」というファンレスの価値を届けられるようになりました。

村石どうしてもファンレスだと熱くなりますし、小型のプロジェクターだとバッテリーの大きさも影響してきます。だから、温度が上がらないように制御をかけ、熱くなったら出力を絞ればバッテリーももつんじゃないかと。確かにプロジェクターのように光を出すものはだいたい熱も出すし、さらにはファンが付いたら音がうるさい。それらを克服しないとアドバンテージを得られないだろうとは思っていました。

完成間近でレンズ破損、まさかの仕様変更

―― その他、大変だった局面を教えてください

村石あるとき、私が試作品を確認していたらレンズが割れていたのを発見しました。今までの経験から、これは後で問題が大きくなるだろうと判断して、保護ガラスを付け、金型をつくり直すことになったんです。

緑川そう、忘れもしない大きな変更でした。保護ガラスを追加するためにはレンズ側の外形を少し伸ばさないといけなかったのですが、デザインと寸法を変えるとメカの方にしわ寄せが出る。メカも修正しないといけない。「じゃあ、どうするか?」と何度もデザイナーの浜村と連絡を取り合いながら、ぎりぎりまで完成度を高めて、なんとか期日に間に合わせました。お互い苦労したので、浜村とは強い絆で結ばれましたね。

村石完成に近いタイミングだったので慌てましたが、あの時点で仕様変更できて良かったです。

緑川もうひとつ大変だったことは、2021年5月にご支援者様にお届けすることが決まっていたので、残された時間がわずかだったことです。通常業務も進めながらこのプロジェクトに参画していたので、この頃は普段よりさらに3倍速で働いていた気がします。

村石辛いけど楽しみながらやっていたよね。

緑川そう。自らやりたくてやっていたので、楽しみながらできたと思います。辛さだけだったら、完成していませんでした(笑)。

パンデミックのさなか、製品の最終確認へ

―― 緊急事態宣言が出た頃、台湾へ出張されたそうですね

村石オンラインで台湾のOEMメーカーとやり取りをしていましたが、やはり製品の確認が難しく、2020年1月の緊急事態宣言が出た時に出張しました。しかも、メーカー訪問ができたのは1週間だけで隔離期間が3週間(笑)。もちろんオンラインで仕事していましたが。ところが、こんな状況下で、久しぶりに私が行ったものだから先方の担当者が喜んでくれて、一気に業務のスピードアップが図れました。

緑川一方で私は、さまざまな手続きを踏んでビザを取得して、PCR検査の結果も陰性と出て、トランクに荷物を詰めた出発前日の夕方に、所属組織から出張NGの通達が出ました。もともと中国語検定を取得していたことと、出張に向けてオンライン英会話を続けて語学の準備もしていたため、余計に落胆しました。

村石海外のOEMメーカーとのやりとりは、仕事のやり方や価値観の違いなど勉強になることが多いので、緑川くんにはぜひ一緒に行ってもらいたかった。あれは残念だったよね。

―― 台湾ではどのようなことをしてきたのでしょうか?

村石現場で、筐体の部品や金型で成型した部品の精度を確認したり、手に取って質感を試したりしました。あとは、RICOH Image Pointerで表示されるカラーバランスのチェック。本来であれば、緑川くんと一緒に調整するはずだったのですが、私とOEMメーカーのエンジニアとで2日くらいかけて真剣にやってきました。

緑川私もその場にいたかったですね。日本に残された週末は、妻に「今日だけでいいからひとりにさせてほしい…」と伝え、自転車に乗って湖を眺めに行きました。それくらい残念でした。

ご支援者様との交流が製品づくりに活きた

―― クラウドファンディングはいかがでしたか?

村石Web上でご支援者様の意見をいただき、すべてを製品づくりに反映させるのは難しかったのですが、とても参考になりました。

緑川本当にありがとうございました。

―― ユーザーへのメッセージをひと言お願いします

村石RICOH Image Pointerは、お客様によってさまざまな楽しみ方が見つかる製品だと思います。ぜひ自由に使ってみてください。そして、皆さんで情報交換してください!

緑川やはり、ポケットからサッと出して、線をつながずに使えるのは大きなメリットだと思うので、気軽に持ち出してもらいたいですね。たとえば、帰省のときに持って行き、最近撮った画像を見せて近況報告すれば家族や親戚とワイワイ楽しめると思います。RICOH Image Pointerをご自身で楽しむのはもちろん、コミュニケーションづくりに活用してもらえると嬉しいです。

※ 掲載情報は2022年6月時点のものです。

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