【開発者インタビューVol.1】
前代未聞のモノづくりが始まった!
株式会社リコー TRIBUS推進室
高橋 朋子/米田 優
応募総数200以上。厳しい審査を経て勝ち残った
―― 開発のきっかけを教えてください
高橋RICOH Image Pointerは、スタートアップ企業や社内外の起業家の成長を支援し、事業共創を目指すプログラム「RICOH ACCELERATOR 2019」に応募したのが開発の始まりです。日頃から、ユニークな着眼点でのものづくりが好きだった和田 雄二が「ポケットに入れて持ち運べるプロジェクターをつくりたい」と発案しました。この「RICOH ACCELERATOR 2019」には、社外104社、社内110チームが参加したのですが、2019年10月のコンテスト最終選考に進んだのが13案。そこで高い評価を得た5案のうちのひとつがRICOH Image Pointerでした。
――どのようなメンバーでスタートしたのですか?
米田プロジェクトのコアメンバーは和田を含む5名です。たまたま和田の近くにいた僕たちがおもしろそうだなと思って参画。「これはダメだよね」「ここはいいね」などと議論をしながら企画を練っていきました。
高橋社内のリソースが使えたため、他部署にも協力してもらいました。法務や経理といった部署は普段の業務とは異なるので、煙たがられるかもしれないと気が引けていたのですが、すごく親身になって相談にのってもらえました。
米田弊社はコピーやプリンターなどBtoB商品が主なのですが、コンシューマー向け製品に関わっていた社員にも入ってもらい、お客様とのコミュニケーションについてどう構築していくかも考えました。
クラウドファンディングの支援者と共につくり上げた
―― 設計・開発段階でこだわった点はどこですか?
高橋和田が最初に考えたモデルは、手に持って使ってもらいたいとのことで卵状のデザインでした。「このかたちなら転がってしまうので持つしかない」と。けれども、誰に聞いても置けないのは疲れるから置けるようにした方がいいと(笑)。それで現在のかたちになりました。
米田あとは、プロジェクターにつきもののファンを搭載していない点ですね。ファンをなくすと放熱のための金属が必要となり、結果として全体のサイズは大きくなりますが、その分、デザイナーにムリを言って幅を少し広げてもらいました。
高橋「手で持っていて、熱い空気が出るのはイヤだ」と、和田が最初からファンレスにこだわっていたんです。実際問題、排気口をつけたとしても手持ちのデザインなので手で排気口をふさいでしまうことになってしまいます。。結果的にファンがないので音がしない。よって、静かな場所でもストレスなく使うことが可能になりました。
―― クラウドファンディングを活用したのですよね?
高橋はい。企画や基礎開発の部分をある程度おこなったうえで、2020年3月19日から5月15日まで購入型のクラウドファンディングを実施しました。
米田一般商品に対して、お客様からいただくコメントは「こういう機能はありますか?」「こういうことはできますか?」などのご質問が多いと思うのですが、クラウドファンディングのご支援者様からRICOH Image Pointerにいただいたものは、「こうしたらもっと良くなるのでは?」という提案が多くて、支援者の皆様と一緒につくり上げた印象が強いです。
高橋支援期間の終了から返礼品をお届けするまで約1年の期間がありましたので、待っていただいている間に、試作品を披露し意見をもらう会を設けました。そのときに「メーカーの商品開発に自分の意見が反映される機会なんてめったにない。貴重な体験だ」と言ってもらえたのは嬉しかったです。ちなみに、三脚を取り付ける穴は、支援者の方の声から生まれたんですよ。
かんたんではなかった、コロナ禍での開発・製造
―― 開発途中でうまくいかなかったことは何ですか?
米田テストとしてポケットに入れて持ち運んだら壊れたことですね。
高橋そこで、いろいろなシーンで利用されることを考え、かなり荒っぽいテストをしながら、耐久性を高めていきました。
米田それと、大変だったのは時期ですね。プロジェクトが始動したら、ちょうど新型コロナウイルス感染症が拡大し、緊急事態宣言が発令。私たちも在宅勤務が中心となり、製造現場への出張もできなくなりました。代替手段として写真や動画を送ってもらったり、オンラインで打ち合わせをしたりしながら設計を進めました。
高橋クラウドファンディングの提携先のショップでサンプル品を展示する機会もあったのですが、開始早々、会場のショップが緊急事態宣言でクローズしてしまいました。その後、期間を延長して展示してもらいましたが、外出自粛の影響で限られた方にしか見てもらえませんでした。
―― では、良かったこと、嬉しかったことは?
米田Facebookグループに支援者の方が実際に使っているシーンを写真や動画を投稿していて、それを目にしたときですね。実際に、お子さんに「ほら」と見せて「わーい」と喜んだとか、資料を見てもらうために使っているとか、そういう投稿を見るとグッときますね。
高橋弊社はコンシューマー向け製品が少ないので、お客様の声を聞けるのはとても嬉しいです。「これがあると生活が変わるのではないかと思って支援した」と言われたときは、やって良かったなと思いました。一般発売後にもさまざまな声が聞けたらいいですね。
経験したことのないコミュニケーションが始まる
―― RICOH Image Pointerのおすすめの使い方は?
高橋最近、動画を使うことが多くなっていますよね。若い人は、写真ではなく動画を撮ることが多いのではないでしょうか。ビジネスシーンでも動画を活用することが増えてもいます。なのに、スマートフォンでは誰かに動画を見せづらい、身体を近づけると窮屈でもある。なので、ぜひ動画を見せるときに使ってください。
米田そう、スマートフォンやタブレットに入っている写真や動画を他の人に見せるとき、相手によっては近寄ることで緊張感が生まれる場合があります。これがあれば、そういったことがなくなるどころか、より人を惹きつけられますしね。
高橋スクリーンや壁、それから無地の白いTシャツに映すのがおすすめです。プロジェクションマッピングみたいで盛り上がります。
米田使う人が自由に楽しんでもらえたらいいですね。
高橋スマートフォンがこれだけ普及したのに、画面を数人でのぞき込んで画像共有する方法は進化していませんでした。それが、みんなで顔を上げて見るのが当たり前になればいいと思っています。そして、いつかRICOH Image Pointerが日本だけでなく世界に広がって、大勢で楽しく使ってもらえたら最高ですね!
※ 掲載情報は2021年12月時点のものです。